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東さんは歌人なので、次は歌集を…と思ったけれど、
このデビュー小説が気になったので、入手した。

元々は 『長崎くんの指』 というタイトルで出版されたものが、文庫化の際に改題されたようだ。

6つの短編に、あとがきを兼ねた一編が加わった構成で、
コキリコ・ピクニックランドというさびれた遊園地を舞台にした連作となっている。
連作と言っても、あくまでも舞台が提示されているだけで、それぞれは独立した話として読める。
よって、特に遊園地自体は重要では無い…と言いたいところだが、
もし、それが無かったとしたら、やはり読後の感じ方はずいぶん違っているように思う。

難しい話じゃない。
泣ける話でもない。
感動する話でもない。
楽しい話…でも、ない。

何とも掴み所の無い小説だ。
つまらないということではない。
物語の着地点というか、ゴールがハッキリしないというか、
これは僕自身の感想なのだけれど、後味が無いという感じだろうか。
こんな読後感は初めてかもしれない。

解説を東さんとも交流がある穂村弘さんという方が書いているのだが、
初めて東さんに会ったときの印象は ぽやーんとしたひと だったらしい。
まさに、これだと思った。
この小説から受けたのは、この ぽやーんとした がいちばん合っているように思う。

「アマレット」と「道ばたさん」が良かった。
特に「アマレット」の主人公であるマリアさんは魅力的なキャラクターだ。
ただ、各章に出てくる登場人物は、その全員がなかなか興味深く、
読んでいてちょっと引き込まれたりした。

さて、穂村さんが解説で東さんの歌を紹介しているのだが、これがとてもいい。
詠まれている風景のその先や、彼女の中にある想いを感じ取れるようで、とてもいい。
僕が気に入ったものをいくつか挙げておく。

  とりもどすことのできない風船をああ遠いねえと最後まで見た
  おねがいねって渡されているこの鍵をわたしは失くしてしまう気がする
  怒りつつ洗うお茶わんことごとく割れてさびしい ごめんさびしい

次はやっぱり歌集かな。
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東さんがゲスト出演した朗読会を観に行った際、
この短編集に収録された一遍(「白檀」)も取り上げられていた。
それに少し引っ掛かり、その短編集が文庫化されたばかりというので入手。

死後、もし何かにとりつくことができたら…という、
これまでも何度も取り上げられていそうなテーマだけれど、
著者の視点が独特なのか、とても新鮮に読めた。

全体的に泣かせるお話ということではなく、その真逆なお話もあり、
収録作はバラエティにとんでいる。
文体も良い意味で統一されていないので、一気に読み進めることができた。

死者の目で語られているが、読んでいるとそのことを忘れてしまう瞬間もあった。
それだけリアル…というか、普通の日常がうまく描かれていたからだろうと思う。

亡くなった者が残された者へ語りかけたいことは何か…というよりも、
残された者の未来を感じさせてくれる作品…のように、今の僕は感じている。
映画を観てから、この原作を読んだ。
おかげで映画から受けた印象がより深くなり、
更に物語に新たな肉付けができた部分もあり、
僕にとっては映画が先で正解だったようだ。
ただ、もし最初に小説から入ったとしたら、
おそらく違った感想を持ったような気もするけれど。

とても面白かった。

映画化されて話題になるまで、
この小説の事はまったく気にしていなかったのだが、
後から、実は二人の友人から薦められて(?)いたことを思い出した。
まったく別の友達だし、話をした時期も離れているのだけれど、
こういった偶然を考えてみると、読むことは必然だったような気がする。

どこに視点を置くか。
そして登場人物の誰に感情移入するか…などで印象が変わると思う。
僕の視点は森口だった。
映画も小説も。

細かいことを言えば、色々と突っ込みどころがあるけれど、
いくら何でも、それは無いだろ…な点も含めて…いや、そういう点があるからこそ、
小説として、映画として楽しめたのだろうと思っている。

面白いかつまらないか…と言われれば面白かったし、
好きか嫌いか…と言われれば好きだと答える。
僕にとってはそういう小説だ。

  馬鹿ですか?

第六章で森口が吐くこの言葉が、やたらと痛快だった。
発表当時から話題になっていたので、いつかは読んでみようと思っていた。
一応はミステリーと言われているのだし、しかも " 必ず2回読みたくなる " というコピーも、
気を惹かれるには十分だったし。

おそらく僕自身は、この小説で展開される時代の、まさにど真ん中にいたと思う。
でも、この物語とシチュエーションが、僕にはまったくリアルでは無い。
当時はこういう世界があるのだろうことは感じてはいたが、
ギターを抱え、バンドで渋谷のライヴ・ハウスで演奏していた僕には無縁。
あちら側の世界として、勝手な気持ちで敵視さえしていたと思う。

そんな僕がこの本を読んだのだから、そりゃ、大変である。
序盤で展開される恋愛模様には、苦笑どころか馬鹿ばかしさでいっぱいだった。
僕だって当時は人に言えるような恋愛経験はしていなかったと思うが、
それでもこいつらよりはマシだろう…と思ったところで、
何がどうなるわけでもないのだけれど。

でも、僕が小説を読んで個人的に感じる " 面白さ " や " 楽しみ " とはまったく違う意味だけれど、
この本は楽しめたし、面白いとは思った。

読んでいる最中は " 何だか変だな " と思うことばかりで、
全然落ち着いて読むことができなかったけれど、
読み終えたときに感じた " なるほどなぁ " は、
その後、色々なレヴューをネットで読むうちに違った見方も知ることができたし、
更に詳細に解説している人のホームページを見つけて、
" おー、そうだったのか " と感心したりと、こういう楽しみ方ができた…というわけだ。
そこまでを含めての面白さだったし、実際にそのことは面白いと思った。

繰り返すが、僕が感じたのは小説を読んでの楽しみではないので、
その意味ではこの本を他人には薦めない。
でも、話のネタになるよという意味では、薦めるかもしれない。
まだ未読で興味があり、時間と少しのお小遣いがあるのならば、読んでみてください。
もちろん、読後はネット上で様々なレヴューとネタバレを読むことも忘れずに。
きっとBlueさんはダメだと思いますが…と薦められて(?)読んでみた。
ちなみに、この本と作者に対しては何の知識も無かった。

西 加奈子
小学館
発売日:2005-02

その小説の中にしか無い世界に共感して好きになる本が多いし、
もちろんそれが作り物だとしても構わない。
それでもこの本で描かれる世界は、僕にはリアルさに欠けすぎた。
いったい、この異常な家族の物語のどこで感動するのだ。

ちなみに、泣かせようと、そして感動させようとしている帯の推薦文が、とてもうるさすぎる。
ただし、読み終えた感想は、この帯に書いてある内容以上でも以下でも無かった。
ということは、この本は帯の推薦文を読み、想像すれば済む…と言ったら言い過ぎかな。