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知人が最近この本を読み始めたという話をしていたので、僕も久々に読み返してみた。

「みんないってしまう」は山本文緒と出会った記念すべき一冊だ。
書店で本を探していて偶然に見つけたのがこの本であり、
そこから彼女にのめり込んで行ったのである。

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「対象喪失」というのがこの短編集のテーマだそうだ。
その人にとっての大切なものを失うことや別れを意味する心理学・精神分析学の言葉らしい。
よって、この本もそれぞれ日常的な何かとの別れを描いている。
ただし全編、特に捻っているわけでもなく、
自分の周りでもそこいらでも良くあるような話に感じるのだが、
それは書き方がうまいからだろう。
読者によって、その結末やその後が決められていく物語ばかりであると思う。

特に好きなのが「ドーナッツ・リング」。
僕は結婚して十五年の妻子ある編集者では無いのだが、
何だかこの主人公に心情移入してしまったのだ。
今回読み返してみても、そのときに感じたことは変わらず…であった。

「ハムスター」の展開も凄い。
タイトルからはまったく予想も想像もできない物語である。

ちなみに、この本を読んだ後、僕はそのテーマである「対象喪失」に興味を持ち、
それに関する本まで買ってしまった。

「みんないってしまう」は、
ブラック・ティー」「絶対泣かない」に続く本格的な短編集としての三作目のようだが、
こういった初期の作品群だからこその魅力に溢れた物語である。
後のうまくなった彼女の作品よりも、ラフ?な初期作品のほうが刺激的で面白い。


山本 文緒 / 角川書店(1999/06)
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確か山本文緒に出会って二冊目に買った短編集だったと思う。
一冊目で気に入ってこれを手にしたわけだから、
この本が彼女にのめり込む決定的なきっかけになったということだろう。

内容は誰でも犯してしまう小さな罪というのをテーマにした十篇。
よって、読んでいくと過去に自分が犯してしまった罪や過ち、嘘などが思い出されていく。
だからこそ、各主人公達にも共感できる。
おそらく、誰もがあっという間に読めてしまうだろうと思う。

ちなみにタイトル作の「ブラック・ティー」は、
電車(山手線)に置き忘れられた荷物から現金だけを盗んで生活している女性の物語だ。
山手線が一周しても降りず、一日に最低二週…多くて六周くらい乗っている。
この女性のように、山手線が二周もするころにはこの本は読み終えてしまえるだろう。

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さて、この中に「ニワトリ」という作品が収録されている。
他人から借りたものを忘れてしまって返さない主人公が、
そうやって知らないうちに人から信頼されなくなるという物語だ。

もう二年ほど前かな。山本文緒オフィシャルHPで紹介されていたが、
この「ニワトリ」という作品を原作にした短編映画を撮った人がいて、
その映画を含め、同じような短編映画を集めて上映するイベントがあり、
それを観に行ったことがある。
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昔から日記を書くことは嫌いじゃなかった。
中学の頃から20代の終わりまでは、ほぼ毎日ノートに記していた。

山本文緒も自身で”日記フェチ”という程、様々な日記を記し続けていたようだ。
それは作品であったり、ホームページのダイアリーであったり、プライベートなものであったり…。
この「そして一人になった」は、彼女が離婚を経て一人暮らしを始めた一年間を綴った日記エッセイだ。

僕は日記を書くのが好きなので、当然読むのも好きである。
人の日記を盗み見るのは、例えそれが良くないことであろうと誰でもやってみたいことのひとつだろうし。
そういう意味でも日記というものは面白い。
もちろんこれは作品として書かれているので、ノンフィクションであろうとも、
読み手を意識したものである。だから余計に面白い。

僕はこのエッセイで、山本文緒に対しての評価が決定的になったと言ってもいい。
内容によっては、自分の日記を読んでいるんじゃないかと錯覚するほどであった。
それほどにモノの見方や考え方が似ている部分が多かったのだ。

一時期は、このエッセイ風な書き方で、自分の日記風な文章を書いていたことがあるし、
今でもたまにそれは顔を出す。それほど影響も受けた。

山本文緒は、小説ほどにエッセイは評判がよろしく無いような感じだが、僕は大好きである。


山本 文緒 / 幻冬舎(2000/08)
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三省堂書店の週間ベストセラー・ランキングの文庫部門。
7/10付の1位は、見事に山本文緒の「ファースト・プライオリティー」だった。
さすがだ。売れている。皆が待っていたのだ。

小説で無くても良い。軽めのエッセイでいいから、彼女の新作が早く読みたい。

山本文緒  ファースト・プライオリティー
長い間体調を崩されていたが、遂に山本文緒さんが復活したようだ。
それを祝うかのように、
直木賞受賞後の第一作である『ファースト・プライオリティー』が文庫化された。

僕は彼女の短編が好きなのだが、この作品は異質だ。

三十一篇の短い作品がたたみ掛けるように並ぶ。
例えばロックで言えばパンク。短いロックン・ロールが次々に飛び出してくるような感覚。
小説ではあるが、そんなある種のスピード感を持っている。

「偏屈」。
アルバムで言えば1曲目がこれだ。重要な曲ということである。
これは僕のことが書かれている。
女性が主人公であるが、これは僕だ…と思う男性も続出するだろう。

「バンド」。
ありがちな話では、ある。でも、泣けた。

「庭」。
僕の中にはあまり無い世界。家族についての物語は苦手である。
だからこそ、グッときてしまうのかもしれない。素敵なお話。

「ジンクス」。
年上の女性と恋に落ちたくなる。

「空」。
" 普通の人は空なんか一日二分も見ない。
でもあなたは毎日何時間も眺めてるんだから、そりゃなんかみつけるでしょう "
僕も同じように空を見上げていたら何かを見つけられるだろうか?

「小説」。
最後に収められたこの作品は「TOMORROW NEVER KNOWS」か「A DAY IN THE LIFE」か…。

久しぶりに山本文緒ワールドを堪能した。

ちなみに、各物語の主人公の年齢は三十一歳である。
実際にその年齢に近い女性が読むと、かなりリアルかもしれない。


山本 文緒 / 角川書店(2005/06/25)
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