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自分にとって面白い本は、その世界にのめり込み、集中して一気に読むものと、
読み終わるのがもったいなくて、少しずつ読み進めるものと、二つある。
中山可穂の小説は、僕にとっては完全に前者であり、
これまで読んだどんな本も、それは変わらなかった。
ただ、この著者にとっての初のエッセイ集は、ゆっくりと少しずつ…の後者だった。

中山可穂
祥伝社
発売日:2011-03-15

彼女の恋愛観を知り、『感情教育』 を再読したくなった。
今読めば、きっと違った印象を持つだろう。

作家としての生活や、山本周五郎賞を受賞した際の心の動きや、
読んでいるだけで凄まじさがわかるブエノスアイレスへの旅や、
京都へ引越しするまでのエピソードなど、気軽に簡単に読める割には、結構体力を使った。
さすがに中山可穂だ…と思った。

うまく言葉にできないけれど、何故、彼女の小説に惹かれるのかが、
少しわかったような気がする。何かが似ているのだと思う。
その何かを言葉や文章にしてみたいけれど、今は難しい。

ひとつだけハッキリ彼女と同じなのは、京都に住んでみたいという点かな。
彼女はそれを実現したけれど。
まぁ、住むことはできないけれど、行くことはいつでもできる。
読み終えた今、京都にとても行きたくなっている。
素敵なカフェでゆっくりと本を読みたいな。
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このところ、しばらくは小説を読む気分では無かった。
もちろん欲しい本は入手しているので、読まれない本が何冊か溜まっている。

最近、やっと読める体力が付いてきたかな…と思うようになって手にした小説。
それはやはり中山可穂だった。

中山 可穂
角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2009-09-18

あの、個人的にとんでもない感動を受けた「卒塔婆小町」が収録された『弱法師』
この『非歌 エレジー』は、それと同じく三つの中編で構成されている。

  掃き溜めのような街の底で、わたしは輝くけものを見た

この " 輝くけもの " というのは二人の女子高生である。
二人が金属バットでプリクラマシンを破壊する「隅田川」の冒頭のシーンから、
いつものように、既に中山ワールドに入り込んでいる自分がいた。
あとは、最後まで一気に読みきるだけであった。

それぞれの話は、すべてがキレイに完結する物語ということではなく、
読者に余韻を残して終わるものばかりだ。
もちろんストーリーは終了するのだが、読後感が独特で、しばらく引きずることになる…いや、
引きずるのではなく、引きずられることになる…が僕にとっては相応しい。

本の帯には " 届かぬ想い、禁じられた愛~中略~究極の恋愛小説 " とある。
これまでは、こういったコピーに興味などそんなに持たぬ僕であったが、
この本に関しては、うんうんと素直に頷いてしまった。

素晴らしいとか、最高だとか、そんな言葉で彼女の作品を僕は評価したいのでは無い。
もう、そんな次元を超えてしまっている。
中山可穂の作品を、僕は必要としているのだ。
  東京、ブエノスアイレス、サイゴン…。
  ラテンの光と哀愁に満ちた、神秘と狂熱の恋愛小説集。

これが帯に書かれたコピーだ。

5つの短編…というか中編が収録されていて、
それぞれタンゴが重要なテーマになっているが、この音楽のことを知らなくても大丈夫。
そりゃ知っていれば楽しみ方も変わると思うけれど、
あくまでも物語の芯になるのはタンゴではなく恋愛である。
これは僕自身の感じ方かもしれないが、過去に読んだ中山作品では、
例え行ったことの無い外国でも、
その景色と匂いまでもがページから飛び出してくるという経験をしているので、
知らない音楽であるタンゴも、読んでいる最中は僕の中でちゃんと鳴っていた。


中山 可穂
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収録された5つの作品はすべて違うタイプである。
しかも、中山作品最大の特徴である同性愛が出てこない物語もある。
実際に読んだあとに残る感覚は、今までの彼女の作品から感じたものと少し違った。
何だか前を向いて終わるのだ。主人公がポジティヴなのだ。
なるほど、宣伝コピーにあった

  著者の新境地5作品。いずれ劣らぬ珠玉作品集

という意味が読み終わってからわかったような気がした。

過去にも書いてきたことだけれど、僕にとっての中山作品は特別だ。
とにかく面白い。
面白いという形容は軽いのだけれど、これしか表現できる言葉が無いので仕方が無い。
すべての褒め言葉が、この面白いという単語の中に入っている。
今回の5作品も、すべてが申し分ない。
山本文緒的に言うと、ブラボー!である。

中でも猫の視点で描かれる構成が見事な「ドブレAの悲しみ」と、
タイトル作である「サイゴン・タンゴ・カフェ」がとても良かった。
この二作にはそれぞれ小説家が出てくるのだが、
そんなことが中山可穂自身と重なってしまう読者も多いんじゃないかと思う。
特に「サイゴン・タンゴ・カフェ」は、深読みしようと思えばいくらでもできてしまいそうだ。

また、「サイゴン~」は、小説家と編集者の関係が描かれたストーリーなので、
『弱法師』に収録されていた「卒塔婆小町」を思い出してしまった。
あれは読むのに体力を使った凄い小説だった。
今でもラストシーンの数行を読むだけで涙が溢れてきてしまう。
本当に深くてヘヴィな感動を与えてくれた物語だった。
しかし、こちらも十分にヘヴィではあるけれど、爽やかさを感じることができた。
次の作品が楽しみになる終わり方であった。

この路線で今後も書いてくれるといいな。
今まで中山可穂を読んだことの無い人で、これから読んでみたいという人には、
是非この『サイゴン・タンゴ・カフェ』をお薦めしたい。
この本で、きっと新しい読者も増えるのではないだろうか。

     **********

さて、三省堂書店有楽町店で行われた刊行記念のサイン会へ行ってきました。
写真でしか見たことが無い中山さんですが、想像していたよりも小柄で華奢な女性でした。
でも、やたらとカッコよかったです。
何となくオノ・ヨーコさんを思い出してしまいました。
一見しただけでは物静かでシャイな感じもしますが、内に秘められたものは半端じゃないはずです。
それはサインを頂いたときに交わした会話と笑顔からも十分に感じられました。
僕はこういう人だからこそ、ああいった小説が描けるのだと思います。

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相性。辞書によると「気性が合うこと」とあった。
気性。辞書によると「生まれつきの性質」とあった。

過去にもいろいろなケースで相性の善し悪しを感じてきたが、
僕にとってこれほど相性が抜群なものは無いかもしれない。
中山可穂の小説が、それだ。

三つの中編が収録された『弱法師(よろぼし)』を読んだ。

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最初の1ページ、いや最初の数行を読んだだけで、あっという間に引き込まれてしまう。
今までの中山作品全てが、こういった同じ状態に陥る。
後は、早くページをめくりたくてたまらなくなる。
以前も書いたが、読むというよりも頭の中に活字を叩き込まなければ…という感覚。
読むことが快感なのである。

医師のエリート・コースを進んでいた男が、ある母子に惹かれていき、
その人生が大きく変っていく「弱法師」。
女性編集者と若き青年作家との壮絶な愛が描かれる「卒塔婆小町」。
父・母・娘・伯母の奇妙で不思議な人間関係がヘヴィな「浮舟」。

三つとも素晴らしかった。

作者による文庫版あとがきを読んで気付くことになったのだが、
過去の中山作品には必ずあった性描写が今作には無い。
読んでいる途中はまったくこれに気付かなかった。
性描写無しでこれまで以上のエロスをいかに表現するか…に心を砕き、
書かれたのがこの三つの作品だそうだ。
十分、僕はそれに成功していると思う。

三作とも、それぞれに重要な死が描かれる。
ただ、悲劇ではあるが、読後感は悪くない。

「卒塔婆小町」を読み終えたのは電車の中だった。
涙が出てきて、周りの人に気付かれないようにするのに本当に困った。
こんなに感動した小説は久々である。


中山 可穂 / 文藝春秋(2007/02)
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「野生時代」で中山可穂が特集されている。

彼女の小説のファンになったのはそんなに前の事では無い。
きっかけは山本文緒が何かで「マラケシュ心中」を褒めていたのでチェックしていたことだった。
結局それは文庫化されてから読んだのだが、
その時点では彼女について何の知識も持たずにページをめくったのである。

その強烈な内容によって興味を持ち、次に処女作である「猫背の王子」を手にする。
あまりに面白く、ほぼ一日で読み終えてしまった。そして続編の「天使の骨」へ。

この二冊。これが決定的だった。

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その後も彼女の作品を読み続けた。
ハズレが無かった。すべて僕にはアタリだった。

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彼女の小説を簡単に言ってしまうと、女性同士、所謂レズビアンの恋愛が描かれるものだ。
もちろんその恋愛描写は僕には十分に刺激的だ。
しかし、僕はそういった理由で彼女の作品を読んでいるわけでは無い。
それ以外の何かに強く惹かれるのだ。

「白い薔薇の淵まで」という山本周五郎賞を受賞した作品がある。
「野生時代」の特集には、作者本人による作品解説が載っているのだが、
そこでこの作品についてこんなことを述べている。
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