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もちろんこの本、『アカペラ』を買いに行ったのだけれど、
山本文緒の新刊が書店に平積みされているのを見ただけで感激してしまった。

三つの中篇が収録されているだけだが、
買ったときから何だか大事に読みたい気分になって、
僕には珍しく、ゆっくりと時間をかけて読んだ。

帯には “ 待望の復帰作にして最高傑作! “ というコピーが躍っている。
そうか、小説は6年ぶりなのか…という想いと、
いくら何でも最高傑作は大袈裟だろう…という想いが同時にアタマに浮かぶ。
復活なのだから、まぁ良くある大袈裟な宣伝文句の定番だろうな…と思っていたが、
第一章の「アカペラ」を読み始めて、
このコピーを書いた人の気持ちもわかる…と思うのもすぐだった。

「アカペラ」
15歳の中学生たまこと、72歳のじっちゃんとの関係が、
たまこの視点と学校の担任である蟹江の視点から交互に描かれる。
この構成もいい。
そして、いきなりたまこの文体に引き込まれる。

最初は良くありがちな家族関係のストーリーかなと思っていたが、
読み進むにつれてかなりぶっ飛んだ設定であることがわかる。
そして、それは最後まで変わらない。
小説の世界だからこそ…の物語。
もし、これが実際にあったら、絶対に退いてしまうだろう。
ただ、そんなある意味で異常とも言える関係だが、
その文体もあって、とても楽しく読めると思う。
そして何よりもここまでエンターテイメントな作品として提示できる山本文緒に拍手。
凄いと思った。
だって、僕はラスト・シーンに感動してしまったのだ。
もう少しで涙がこぼれそうだった。昼休みのドトールで(笑)。

「ソリチュード」
高校時代に家出してから二十年振りに帰省した春一。
東京の自分の店を放っぽりだしたまま、帰省した実家でだらだら過ごすのだが、
その間、以前に関係を持った従妹の美緒やその娘である一花。友人の武藤。
そして両親などとの関係が描かれる。
自分で自分を駄目な男と言うのだが、僕は春一に共感できる部分が多かった。
途中で友人が春一をスナフキンに例える場面が秀逸だと思った。

「ネロリ」
もうすぐ50歳になる社長秘書の志保子と39歳の病弱な弟、日出男。
その弟に好意を寄せる19歳の女性ココアちゃん。
ここに姉の仕事や社長との関係や取引先社員との交際話やらが絡んでくる。
読み始めたときは、収録作の中ではまともな物語なのかなと感じたが、
やはりどこかイビツな家族関係であり、一筋縄ではいかない。
ラストに謎解きのようなものがあるのも、締め括りとしては変化があって良いと思った。


山本 文緒
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収録された三篇のうち「アカペラ」は病気療養直前(2002年1月)に発表された作品であり、
あとの二編は復帰後(2007年10月以降)の作品である。
この本を読んでの無責任な希望を言うと、
当時の山本文緒…療養前の彼女が「アカペラ」の次にどんな作品を書いたのか…に凄く興味がある。

とにかく、こうやって本格復帰してくれたのはファンとしては嬉しい。
今後も山本な作品を届けてもらいたい。マイペースで。
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