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確か山本文緒に出会って二冊目に買った短編集だったと思う。
一冊目で気に入ってこれを手にしたわけだから、
この本が彼女にのめり込む決定的なきっかけになったということだろう。

内容は誰でも犯してしまう小さな罪というのをテーマにした十篇。
よって、読んでいくと過去に自分が犯してしまった罪や過ち、嘘などが思い出されていく。
だからこそ、各主人公達にも共感できる。
おそらく、誰もがあっという間に読めてしまうだろうと思う。

ちなみにタイトル作の「ブラック・ティー」は、
電車(山手線)に置き忘れられた荷物から現金だけを盗んで生活している女性の物語だ。
山手線が一周しても降りず、一日に最低二週…多くて六周くらい乗っている。
この女性のように、山手線が二周もするころにはこの本は読み終えてしまえるだろう。

CIMG3609.jpg

さて、この中に「ニワトリ」という作品が収録されている。
他人から借りたものを忘れてしまって返さない主人公が、
そうやって知らないうちに人から信頼されなくなるという物語だ。

もう二年ほど前かな。山本文緒オフィシャルHPで紹介されていたが、
この「ニワトリ」という作品を原作にした短編映画を撮った人がいて、
その映画を含め、同じような短編映画を集めて上映するイベントがあり、
それを観に行ったことがある。

所謂こういう映画祭みたいな催し物に行くのは初めてだったけれど、
何かきっかけが無い限りは行くどころか知ることも無い。
山本文緒経由で行ったのだが、
それ以外に何かを感じられて帰ってこれたらいいな…って思い、出かけた。
結果は、まさにその通りになった。

お目当ての映画はたった24分の作品。
原作の良さをそのままにうまく映像化していた。

しかし、実はその前に同じ監督の、
たった3分の「プレリュード」という作品が上映されたのだが、
これが素晴らしかったのだ。
思わずじ~んとしてしまい、終わった瞬間、ちょっと涙が出そうになった。

映画を言葉で説明するのは無理だと思うが、
本当に素晴らしかったので内容を僕が受け取ったまま書いてみる。
まずは簡単にあらすじを…。たぶんこうだったと思う。

 グータラな主人公の「僕」は、夏になると毎朝9時に目を覚ますのが日課になる。
 隣に住んでいる「なっちゃん」がピアノを練習しだすからだ。
 その練習曲は毎年違う。
 毎日毎日練習するその曲を聴きながら、僕は夏を過ごす。
 そして、毎年8月30日になると、なっちゃんから僕へ1枚の絵はがきが届く…。


とても短い作品なので細かいところまでは自信が無いのだが、
たぶん「なっちゃん」は小学生。
そして8月31日かその日以降に、その夏に練習した曲を発表する会なんかがあるのだろう。
30日に僕へ届く絵はがきには、おそらく「なっちゃん」が書いた絵と、
その夏に練習した曲名が書かれている。
「僕」の手元にはもう何枚かの絵はがきがある。
そして今年も新たに1枚が加わった。
そのはがきには、いつもの絵と一緒に「プレリュード」と書かれていた…。

映画は、そのプレリュードという曲の演奏時間そのものの長さなんだと思う。
曲が終わると同時に映画も終わるわけだ。
僕の感じた事が監督の想いと同じなのかはわからないし、
それどころかストーリーはまったく違うのかもしれない。
でも、感動した。たった3分のお話に感動した。
これは3分間のポップ・ミュージックを聴いて感動するのと似たような、
それでいて新しい何かのような…。
うまく言えないけど、そんなニュアンスかなぁ。

監督は日向朝子さんという。

小説「ブラック・ティー」は、こういう出会いもさせてくれた印象的な短編集だ。


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