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現実にはほとんどあり得ない物語なのに、
読者は自分の身にも起こりそうな展開で読むことができ、
更に主人公と読者が重なるような心理描写。そしてエンディングは、
最近気に入っている表現だけれど「ハッピーエンドじゃないハッピーエンド」という恋愛小説…。
こういう小説が、僕のココロを豊かにしてくれている。

逆に好きじゃないのは、さもどこにでもありそうな設定とシチュエーションの中、
途中で二人の間に波風が吹くが、ラストは「良かったね」というハッピーエンドだ。
そんな小説があるかと言えば、あるのだ(笑)。

さて、この本は5人の女性作家によるアンソロジー。
川上弘美、小池真理子、篠田節子、乃南アサ、よしもとばななというメンツ。
僕はそれぞれの作品を多く読んでいるわけではないので、
書店で見つけたときは迷わずに入手した。
短編にはその作家の力量や特徴が出ると思っているので、
僕の作家に対する好みを判断しやすい。
過去にも山本文緒を筆頭に良い作家に出会えているので、短編、
しかもこういったアンソロジーを読むのは好きなのだ。

●「天頂より少し下って」川上弘美
この人は文章に凄く特徴があるなぁ…というのが過去に読んだ印象だ。
どう特徴があるのかをうまく説明できないのだけれど、
普通の文章のようで、何か脳の普段使わないところが刺激されるような感じです。

45歳の主人公を「あなた」と呼ぶ年下の恋人との関係に、息子との関係が絡む。
これから…っていう終わり方が気持ちよかった。

●「夏の吐息」小池真理子
ある日突然姿を消した恋人からかかってくる無言電話のシーンがすべて。
本当に素敵なシーンだと思う。

●「夜のジンファンデル」篠田節子
中東に単身赴任する友人の夫との過去の一夜。
何かがあったわけでもないが、とても甘く余韻が残る物語。大人…って感じ(笑)。

●「アンバランス」乃南アサ
主人公の男女、それぞれ別々の視点から相手に対する思いが語られていく形で話は進む。
お互いがお互いのことを思っているのに、
現実には誤解が生じてうまくいかないというアンバランスさをうまく表現した見事な構成だ。
ただ、そのアンバランスが修正されていく様子があまりにも急で簡単すぎると感じてしまい、
ちょっと最後はしらけてしまった。残念。

●「アーティチョーク」よしもとばなな
主人公とおじいちゃんとの関係が強烈で、なかなか読ませるなぁと思っていたが、
恋人との別れ話が最後はうまくまとまっていく様は、
「こんなのあるかよ」と僕に思わせるには十分な展開を見せた(笑)。
これもちょっと…って感じでした。
僕には安っぽいTVドラマみたいな気がしてしまうんだ、どうしても。

小池真理子、篠田節子の二篇が良かった。次点は川上弘美。
篠田節子は「ゆがんだ闇」ではあまり印象に残らなかったんだけど、
ホラーというより恋愛ものが面白いのかもしれない。

さて、5つすべてにお酒が出てくるのだが、結構ポイントが高いアイテムとして描かれている。
これは偶然ではなく意図的なものだろう。
恋愛にはお酒は必需品なのかな?


川上 弘美
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