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『野性時代』に連載されていた日記エッセイをまとめたもので、ファン待望の新作だ。


山本 文緒
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僕は彼女の小説はもちろんエッセイも大好きで、
特に、過去に読んだ『そして私は一人になった』という、
これまた日記エッセイにハマったことがあるのだ。
あくまでも作品なのでプライベートな日記そのままでは無いのだろうが、
以前も書いたことがあるけれど、自分の日記を読んでいるような錯覚を起こすことさえあった。
そう思わせられてしまうことに、彼女の作家としての力量や魅力があるのだろう。
もしすべてがフィクションだったとしても十分にエンターテインメントしているので、
作品としても優れていると思う。

ご存知の方も多いだろうが、
この新作は、タイトルは『再婚生活』なのに、著者の闘病生活を綴った内容である。
実質的には壮絶な闘病日記だ。
壮絶…といっても淡々と綴られているし、愉快な描写も少なくない。
人によっては重く感じないかもしれないけれど、僕はこれを『野性時代』の連載で読んでいたときは、
何とも凄まじいものだなぁという印象を持っていたものだ。
だから、こうして改めて一冊の本として読むと、僕には十分ヘヴィだった。
実はずいぶん前に読み終えていたのだけれど、読んでいる最中から独特な気分になっていて、
読み終えてからしばらくはアタマの中が整理できないでいたのだ。
書かれている内容や状況に共感できたわけではない。
でも、読書中の僕は山本文緒と同化していたのかもしれない。
ただし、連載時からその印象は少し変わった。良いほうに。

闘病以外については、やはり坂東眞砂子の子猫殺しについてのくだりは印象に残る。
怒りの涙。
理由はうまく言えないのだけれど、この文章が残ってとても良かったなと思った。
また、この本でリタリンという単語を覚えた。

さて、この本のテーマは、彼女が王子と呼ぶ夫との生活がひとつと、
もうひとつが病気との闘いだ。
しかし、更にもうひとつ隠れたテーマ…というか、
僕がこの本に限らず山本文緒の一貫したテーマかもしれないと思っているのが、
" 自由 " と " 一人 " だ。

前述した『そして私は一人になった』の最後は、年末の忘年会の帰り、
電車で眠ってしまったところを女の子に起こされてホームに降りたシーンである。
自分を起こしてくれた女の子も酔っぱらっているのを見て、彼女はつぶやく。

  自由だなぁと思った。
  何でもできるし、どこへでも行ける。
  そう思うとめちゃくちゃ嬉しかった。

僕はここがとても印象に残っていて、
今でもたまに「自由だなぁ」というフレーズがアタマに浮かぶことがある。
彼女と同じではないだろうけれど、そう思うことが確かにあるからだ。
そして、それから十年後に書かれたこの日記にも、同じフレーズがあって驚いたのである。

  自由だな、と感じた。

このフレーズが、意識していなければ読み飛ばしてしまいそうに出てくるのだが、
もちろん僕はそこでストップしてしまった。  

彼女は「一人になるのは淋しいが、一人になるのは楽でもある」と書き、
そして「自由」であり、「幸せだ」とも書いている。
自由と一人。
いつか、このテーマだけで思い切り書かれた彼女の小説を読んでみたいと思った。

P.S.
掲載されているいくつかの写真がとても素敵でした。
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